Money runs low お金が足りない 2016 6 19

 突発的な金融危機が起こった時に備えて、
日米欧の中央銀行は、ドルを供給する用意があるというニュースがありました。
 ここで、不思議に思った人がいるかもしれません。
リーマンショック後の金融危機と景気対策のために、
FRBは、ドルを無尽蔵に供給してきたはずです。
それなのに、ドルが不足するのは、なぜか。
 実は、民間の銀行は、お金がないのです。
このようなことを書くと、多くの人が驚くかもしれません。
 たいていの人は、こう思うはずです。
多くの国民から、お金を預金として預かっているので、
銀行の金庫には、お金があふれているはずであると思うでしょう。
 しかしながら、たとえ、銀行が預金者から100億円を集めたとしても、
その100億円を金庫にしまっておくと、
銀行は、経営が成り立ちません。
 まず、銀行員には、給料を払わなければなりません。
さらに、株主には、配当金を払う必要があるのです。
 そこで、銀行は、100億円を運用して、
いや、100億円を元手に稼ぐ必要があるのです。
 一番典型的なのは、融資事業で稼いで、
給料や配当金を捻出するのです。
最近は、国債投資で稼ぐというのも多いでしょう。
 そういうわけで、銀行は、
預金者から集めた100億円をそのまま金庫に眠らせておくことはないのです。
100億円を元手に積極的に稼いでいるのです。
そのため、銀行には、お金がないと言えるでしょう。
 そこで、急に、資金が必要になったときは、どうするか。
その時は、短期金融市場で、銀行同士が、お金の貸し借りをして助け合うのです。
 ところが、最近は、
銀行も、成果主義になっていますので、
融資事業や国債投資では、なかなか成果が出せなくなっているのです。
 そこで、金融工学の発達により、
金融派生商品、つまりデリバティブという金融商品が登場しましたが、
銀行は、手っ取り早く成果を出すために、デリバティブ取引を行うようになったのです。
 このデリバティブ取引では、大きなリターンが狙えますが、
リスクも大きなものとなります。
 だから、「あの銀行は、デリバティブ取引で失敗したらしい」という噂が流れると、
その銀行は、短期金融市場で、資金を調達するのが難しくなるのです。
 こうした状況になると、
本当に、銀行は、お金がなく、資金繰りに窮することになります。
そこで、中央銀行の出番となるのです。
 ところで、なぜ、銀行は、そのような危ない商品に手を出したのか。
それは、高度な金融工学の計算によってリスクを抑え込んだという宣伝文句と、
格付け会社による高い格付けを得た商品であるという説明で、
つい手を出してしまったのです。
(参考)
「欧米の金融機関の巨大損には蓋がされている」
 2015年現在もなお、デリバティブについては、
保有している間は、時価評価の必要がないという特例が続いています。
 米国と欧州の金融機関では、
持ち手が計算した理論値が計上され続けています。
 本当の損失が、いくらだったのか。
世界の誰も知りません。
 政府機関が銀行に対して行うストレステストでも、
当局の意図で見過ごされています。
(「膨張する金融資産のパラドックス」(吉田 繁治)から引用)
 もうひとつ引用しましょう。
 世界同時株安の原因は、中国ではなく、次のようなことだった。
最大の原因は、商品先物取引を行う、
スイスに本社を置く総合天然資源会社グレンコア社の経営危機による株価暴落と、
同社に10兆円規模を貸し込んだと言われる、
ドイツ銀行をはじめとする欧州大手銀行への波及懸念であった。
(「未来からの警告」(塚澤 健二)から引用)
















































































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